東京シネアドボ「喪失の中の祈りと覚悟 映画が映す東南アジアの内戦・テロと震災・津波

混成アジア映画研究会×国際交流基金アジアセンター presents シンポジウム・上映

東南アジアには、内戦・テロや災害などによって、大切なものや人を突然失ってしまう経験をしている人々がいます。

国内のイスラム教徒人口が世界で最も大きいインドネシアは、9.11以降にイスラム教徒はすべてテロリストだと見なす風潮が高まる中で、自分たちはテロ事件とは無関係であることを世界にアピールしようとしました。その矢先の2002年10月、インドネシアのバリ島でイスラム教の名のもとで爆弾テロが起こったことは、「多様性の中の統一」を掲げてどの宗教も対等に扱うことを国是としてきたインドネシア社会に深刻な課題を突き付けました。また、長くインドネシアの一部だった東ティモールが2002年5月に住民投票を経てインドネシアから独立したことは、インドネシアにとって国土の一体性を失う重大な衝撃を与えました。そしてそのわずか2年後の2004年12月、スマトラ島沖地震・津波(インド洋津波)がインド洋沿岸諸国を襲い、インドネシアはアチェ州を中心に17万人以上を失う大きな被害を受けました。

社会全体が喪失感に包まれる中で、一人一人もまたそれぞれの喪失を抱きしめ、意味のある生を歩もうとしています。バリ島爆弾テロ事件を題材にした『天国への長い道』、インドネシアから独立した東ティモールの舞台とした『ベアトリスの戦争』、そしてスマトラの津波からの復興過程にあるアチェを舞台とする『海を駆ける』をもとに、災いを経験した人々が喪失をどのように受け止め、再び立ち上がっていこうとしているのかを考えます。

※入場無料・予約不要 定員100名
※詳細情報はこちらをご覧ください。
※シンポジウムの記録はこちらをご覧ください。

日時
 2018年5月18日(金)13:45~20:30
会場
 国際交流基金 ホール[さくら](東京都新宿区四谷4-4-1)

プログラム
 13:15 開場
 13:45 開会ご挨拶
 14:00 参考上映 映画『天国への長い道』
 16:00 休憩
 16:15 シンポジウム
 17:40 ディスカッション・Q&A
 18:20 休憩
 18:40 参考上映 映画『ベアトリスの戦争』

シンポジウム
パネリスト
 西芳実(京都大学)
  「語りえぬ痛みを分かち合う:テロの語りへの挑戦」
 亀山恵理子(奈良県立大学)
  紛争はいかに語り継がれるのか:女たちの経験」
特別ゲスト
 深田晃司(映画監督)
モデレーター
 山本博之(京都大学)

参考上映 『天国への長い道』
インドネシア、2006年、115分、DVD、インドネシア語・英語(日本語・英語字幕)
監督:エニソン・シナロ
世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシアはイスラムの名によるテロをどう受け止めたのか。9.11以降に「テロとの戦争」が世界化する中で発生したバリ島爆弾テロ事件を、テロの企画者、実行犯、地元の人々、報道の4つの視点から描くことで恨みの連鎖を避ける道を探る。(photo (c) Kalyana Shira Films)
 

 

参考上映 『ベアトリスの戦争』
東ティモール、2013年、101分、DVD、テトゥン語・インドネシア語(日本語・英語字幕)
監督:ルイギ・アキスト、ベティ・レイス
インドネシア軍による全面侵攻以降、東ティモールにおいて占領が女たちにどのような影響をもたらしたのか。ベアトリスの夫は虐殺を逃れたものの行方不明になるが、16年後に村に帰ってくる。だが、ベアトリスはその男性が夫であることに確信がもてない。
 

 

参考作品 『海を駆ける』
日本・インドネシア・フランス、2018年、107分、インドネシア語・アチェ語・日本語・英語
監督:深田晃司
インドネシアのバンダ・アチェの海岸で倒れている謎の男が発見される。災害復興の仕事をしている貴子はその謎の男にラウ(インドネシア語で「海」)と名付けて預かることになる。貴子と息子のタカシたちの周辺で、謎の男ラウはさまざまな奇跡と事件を巻き起こしていく。2011年の東日本大震災を経て、深田監督のたっての希望で、2004年の津波被害の傷跡を今も残すアチェ州で約1か月のオールロケを敢行。2018年5月26日より劇場公開。(写真 (C)2018「海を駆ける」製作委員会)
(このシンポジウム・上映での『海を駆ける』の上映はありません。)

主催
 混成アジア映画研究会
 国際交流基金アジアセンター
協力
 京都大学東南アジア地域研究研究所
 科研費プロジェクト「物語文化圏としての東南アジア」
問合せ
 国際交流基金アジアセンター文化事業第一チーム山野(jfac_film@jpf.gp.jp)